アレルギー性鼻炎・結膜炎(花粉症など) |
どんな病気? |
●診断のポイント アレルギー性鼻炎・結膜炎は花粉やダニなどにより主として鼻粘膜、眼結膜に起こるアレルギー疾患です。特に花粉によっておこる場合は花粉症といいます。 原因花粉には地域性、季節性がありますが、当院近辺では3月のスギ、ヒノキ科、5月〜6月にかけてのイネ科のカモガヤ、9月のブタクサ属、他にヨモギ属、カバノキ科などが重要です。 診断は鼻と眼の症状のアレルギー性および原因花粉の診断の両方からなります。 【1】発作性、反復性くしゃみ、水性鼻漏、鼻閉、眼そう痒を主症状(花粉症の4大症状)。 【2】発症時期に季節性があり、毎年反復発症します。 【3】鼻汁、結膜分泌物中に好酸球増多があります。 【4】花粉抗原による皮膚反応検査、特異的IgE検査が陽性となります。 【5】既往歴、家族歴にアレルギー疾患の方が多いです。 ●症状 【1】くしゃみ、水性鼻漏、鼻閉、眼そう痒という4大症状以外にも、咽頭そう痒、咳発作、皮膚そう痒、耳そう痒、頭重、倦怠感、不眠、集中力低下などの多彩な症状があります。 【2】症状が特定の季節に反復して起こり、花粉飛散量に応じて症状の程度が左右されます。 【3】通年性鼻アレルギーを合併している場合には、鼻症状は通年的であるが、特定の季節には眼症状を伴って増悪します。 ●検査とその所見の読みかた 花粉症診断のための検査チャート(図を示します。) 【1】問診:花粉症の4大症状と季節性、反復性をお尋ねします。 【2】鼻鏡検査、結膜視診: 鼻粘膜は発症の初期には赤色色調を呈し、花粉の曝露を繰返していくうちに浮腫が起こり蒼白色調を呈して腫脹してきます。 鼻汁は漿液性ですが、鼻粘膜腫脹が強くなり鼻汁の排泄障害が起こると粘液性が加わります。 鼻茸があれば副鼻腔炎の存在も考えられ、顔面単純X線検査やCT検査も必要になります。 鼻腔通気度検査により鼻閉の評価をすることもできます。 結膜視診では、発症初期には眼球結膜の充血、浮腫、眼瞼結膜の充血、浮腫、混濁、濾胞形成などが認められます。炎症が進むと眼瞼結膜の肥厚、乳頭増殖が認められることもあります。 【3】鼻汁中好酸球検査、結膜分泌物中好酸球検査: 好酸球増多が特徴的所見として認められます。分泌物の好酸球染色法(エオジノステインを用いるハンセル染色法)を行います。血中好酸球検査では、季節中に増多を示すとは限らないですが、季節外の平常レベルよりは高値をとる場合が多いので参考にします。 【4】アレルゲン皮膚反応検査:一度に多数のアレルゲンについて、安全にしかも容易にできるスクラッチテストを最初のスクリーニングとして行うのが普通です。プリックテストも似たようなものであるが、皮内テストでスクリーニングをする場合もあります。皮膚反応検査は、患者自身の目で結果をただちに確認できるという利点があります。 【5】特異的IgE検査:現行のCAP RAST,MAST,AlaSTATなどは、原因花粉抗原の診断法として信頼性が高い。しかも検査結果は数値で示されそれを感作の程度として評価できる利点があります。 検査項目の選定に関して、共通抗原性の高い花粉類では、例えばイネ科花粉類では、カモガヤあるいはオオアワガエリ(チモシー)で代表します。ただしスギとヒノキは共通抗原性はありますが、ヒノキ花粉による感作も考慮して両方で検査をしたほうがよいでしょう。 なおIgE検査は、花粉症単独感作例では通常は基準値の範囲にあり診断上の意義は認められにくいようですが、ハウスダストあるいはダニとの重複感作例や他のアレルギー疾患合併例では、高値を示すことが多いです。 ●確定診断のポイント 鼻と眼の症状がアレルギー性であることを診断したうえで、次の項目がポイントになります。 【1】花粉アレルゲンエキスによる皮膚反応検査で陽性アレルゲンが原因花粉の疑いが強い。 【2】特異的IgE検査で陽性花粉アレルゲンが原因花粉の疑いが強く、抗体値が高ければ確診できます。 ●鑑別すべき疾患と鑑別のポイント 【1】鼻の病態に関しては、通年性鼻アレルギー鵐、急性鼻炎、血管運動性鼻炎などがあげられます。 【2】結膜の病態に関しては、細菌性結膜炎、ウイルス性結膜炎などがあげられます。 |
予防は? |
抗アレルギー薬による予防的治療が基本で、予測される花粉飛散開始日の1〜2週間前から投与を開始し、季節中は継続的に投与します。 |
治療は? |
【1】抗アレルギー薬による予防的治療が基本で、予測される花粉飛散開始日の1〜2週間前から投与を開始し、季節中は継続的に投与します。 【2】症状の速やかな改善には対症薬を使います。鼻閉症例には鼻用ステロイド噴霧薬が第1選択薬です。 【3】長期的には減感作療法も必要な場合も。 【4】構造性鼻閉症例では手術も必要なことがあります。 【5】原因花粉の防除を徹底してください。 手術適応のポイント 鼻症状に関し薬物療法無効の症例では、鼻中隔彎曲、下鼻甲介骨肥大などの構造性鼻閉を想定して、X線検査、鼻腔通気度検査を行います。構造性鼻閉症例と診断されたならば、鼻中隔彎曲矯正術、粘膜下下鼻甲介骨切除術、下鼻甲介切除術などの適応とし、十分な理解のもとに手術を行います。手術をすることで鼻腔通気は改善し、薬物療法にも反応するようになります。 |
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