味覚研究 赤ちゃん時代の食習慣を見直そう
ニューヨーク・タイムズ・ニュースサービス
2014年11月7日17時50分
赤ちゃんが歩き方を覚える前に、どんな食べ物を与えたら好ましく育つか? 最近発表された栄養学に関する一連の研究によると、乳幼児期の摂食パターンは、これまで考えられていた以上に長期間、成長後の食生活に影響をもたらすことがわかってきた。
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「乳幼児期に形成される味覚、とりわけ果物や野菜、甘い飲み物といった嗜好(しこう)は長く持続する」とエルシー・タベラス博士はいう。ボストンにあるマサチューセッツ総合病院の小児科長だが、今回の新しい研究には直接かかわってはいない。
今回の研究は11件の研究をひとまとめにしたもので、小児科学の専門誌「The Journl of Pediatrics」に掲載された。研究者たちは、約1500人の子どもについて、その子たちの生後12カ月までの摂食パターンを調べ、6歳になった時にはどんな食べ物を日常的に口にしているかを追跡調査し、分析した。
従来の研究でも、味の好みが乳幼児期に開発されることはわかっていたが、その嗜好は就学年齢になるとどうなるか、はっきりは解明されていなかった。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の疫学者で、研究論文の筆者の一人でもあるケリー・スキャンロン博士は「乳幼児期に果物や野菜をほとんど摂取しないと、6歳児になってもそれらをあまり食べないことが明らかになった」という。
スキャンロン博士たちは追跡調査の分析にあたって、人種、世帯収入、授乳が母乳か人工乳かといった要素を考慮した。また、その子が食わず嫌いな子かどうかということも日常的な食べ物の好みにかかわってくるという。
スキャンロン博士らの研究は、乳幼児期における多様な果物や野菜の離乳食摂取がいかに重要かを強調している。乳幼児期から成人に至る食習慣を研究するウィリアム・アンド・メアリー大学(バージニア州)のキャサリン・フォーステル准教授(心理学)は「食べ物の嗜好は赤ちゃんのころの経験がその後を左右する要因になる」と指摘し、「親は、赤ちゃんが最初に拒否反応を示したからといって、それを食べさせるのを自ら抑制しないようにすることが大切だ」といっている。
フォーステル准教授による2007年の研究では、離乳食用にピューレにしたサヤインゲンを初めて食べるよう差し出された幼児は、最初は口をつぼめ顔をそむけるが、親がもう一度食べさせようとしたら、今度は嫌がらずに口を開くという。
また、今回の一連の研究によると、量の多寡にかかわらず、砂糖が入った甘い飲み物を飲んでいた乳幼児は、6歳になると、飲んでいなかった子よりも、最低でも日に1回は甘味飲料を飲むようになる確率が2倍も高い。さらに、生後10カ月から12カ月の赤ちゃんで、週に3回以上、砂糖入りの甘い飲み物を口にしている子は、6歳の時には、乳幼児期に飲んだことがない子よりも肥満になる傾向が2倍強まることもわかった。
母乳で育ったかどうかが、その後の食生活にどのような影響を及ぼすのかははっきりしていない。だが、母親の食習慣は母乳の味に反映するから、母親が授乳期に日常的に口にしている食べ物の風味が、離乳期の味覚にも引き継がれる。
母乳で育つ子は、毎回同じ味の粉ミルクなど人工乳で育つ子と比べて、初めて口にする食べ物でも嫌がらずに手を出す傾向がより強くなるとの研究結果もある。加えて、CDCの研究では、母乳で育った子が6歳児になった時には、砂糖入り甘味飲料よりも水を好み、果物や野菜も好んで食べるようになる傾向があることもわかった。
タベラス博士によると、最近の研究では、12歳以下の子どもの肥満を防ぐには母乳で育てるのがいいとする考え方に疑問が出ており、むしろ、経済的、文化的な要素の方が重要だとする見方が提示されている。ただし、3歳児までに限っては、母乳による授乳と肥満防止には強い相関関係があることが実証されているという。
「乳幼児期における望ましい食べ物の与え方は、どうあるべきなのか。このことについて、私たちは親に対し、きちんとした指導をしてこなかった」。ヒューストンにあるテキサス大学公衆衛生大学院健康生活センターのダイアナ・へルシャー所長の指摘だ。
まあしかし、乳幼児がサヤインゲンのピューレを口にするのを嫌がったとしても、親はすべてを諦めてしまうほどのことはない。そうフォーステル博士はいう。やり方次第でチャンスはある。子は親を見習う。例えば、芽キャベツ。親が芽キャベツを食べているところを見せれば、幼児も食べたがるだろう。
「つまり、あなたの子どもの食習慣を直すのではない。あなたとあなたのファミリーの食習慣を見直すことが大事なのだ」とフォーステル博士は話している。(抄訳)
(Catherine・Saint・Louis)
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