子宮頸がんワクチン、副作用は脳障害か [2014年09月04日(木)]
子宮頸がんワクチン、副作用患者は脳障害か 原因は不明

2014年9月4日11時21分

 子宮頸(けい)がんワクチンの接種後に長期的に痛みなどの症状を訴える事例が相次いでいる問題で、女性患者32人の髄液を調べたところ、脳に障害が起きている可能性があると、国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター副院長の高橋幸利医師が4日、金沢市で開かれた日本神経免疫学会学術集会で発表した。

 これまでに痛みなどの原因は明らかになっていない。高橋医師は、ワクチンとの因果関係は不明としたうえで、本来なら細菌やウイルスの侵入を防ぐ免疫に異常が生じ、自らの脳の機能に様々な障害を引き起こしている可能性を指摘した。北海道立子ども総合医療・療育センターとの共同研究結果として発表した。

 髄液を調べたのは、昨秋以降に両施設で検査・治療を受けた15〜20歳の32人。接種して数カ月〜1年以上たってから、痛みのほかに「視野が狭まる」「引き算ができない」「自分の名前や母親がわからない」「強い不安や恐怖感」といった多様な症状を訴える。32人の髄液と、接種をしていない10〜40代女性の髄液を比較。32人からは、炎症などを起こす様々な免疫活性物質や、白血球からつくられる複数の抗体が、高い数値で検出されたという。

 高橋医師は「炎症を起こす物質が異常に多いと痛みに過敏になるという海外の論文が複数ある。接種後の痛みと関係があるかもしれない」と指摘する。

 また、接種をした患者の髄液から検出されたのと同じ種類の抗体を、健康なマウス5匹の脳に投与したところ、量を増やすほど、尾を上げる不安・恐怖の行動が強まった。高橋医師は「接種者に広くみられる不安や恐怖の症状は免疫異常が背景にある可能性もある」と推測する。

 厚生労働省の検討会は今年1月、接種後に多様な症状が出る原因として免疫反応や中枢神経疾患の可能性を否定し、「心身の反応」と結論づけた。副作用が起きる時期も「接種から1カ月以上経過して発症する例は、接種との因果関係を積極的に疑う根拠がないと考えられる」としていた。