前者には片頭痛、群発頭痛、緊張型頭痛などがあり、後者は頭蓋・頚・眼・耳・副鼻腔・歯・口などの器質的疾患に起因する頭痛です。
頭痛は単に「痛み止め」を飲めば、それでいいとは言えません。中には、どんどん病状が重くなる脳血管障害や腫瘍なども含まれるからです。またいわゆる「頭痛もち」の頭痛であっても、最近、大変優れた頭痛薬が発売されたので、ぜひお試しいただきたいと思います。
まずは頭痛の診断をしっかりつける必要があります。診断にあたって最も大切なことは頭痛の部位ならびにその臨床経過をしっかり把握することです。特に、同じタイプの頭痛を何度も経験したことのある慢性再発性頭痛か、これまでに経験したことのない急性あるいは亜急性頭痛かの判断が大切です。
急性頭痛の場合は器質的疾患が基礎にあることが多いので、ぜひ速やかに医療機関を受診して下さい。 経過については、以下を参考にして下さい。 ・突然発症:くも膜下出血 ・発熱とともに数日の経過:ウイルス性髄膜炎、化膿性髄膜炎 ・上気道炎に引き続き1週間で増悪:急性副鼻腔炎 ・発熱とともに1〜2週でどんどん悪化:結核性髄膜炎、真菌性髄膜炎 ・いつとはなしに始まり、2〜4週で徐々に悪化:脳腫瘍、慢性硬膜下血腫
【1】慢性再発性頭痛のチェックポイント
頭痛の部位と性質および伴って起こる症状(随伴症状)
慢性頭痛をお持ちの方の約三分の二の方は、この病気です。必ずしも筋収縮を伴うわけではないので、最近は筋緊張性頭痛から緊張型頭痛という名で呼ばれることが多くなってきています。後頭部から両側性に始まり、頭痛の増悪とともに両側頭部さらに眼窩後部へ広がる、「重く持続的な」、「頭部を圧迫されるような」、「締めつけられるような」痛みです。三分の一の例では一側に限局しますがが、後頭部に頭痛の中心であることに変わりはありません。肩や後頚部の凝りを伴います。軽度〜中程度の痛みなので日常生活に支障をきたすことは少ないです。日常的動作による増悪は少なく、悪心、嘔吐、羞明、音過敏などを伴うことも普通はありません。
診断のポイント @慢性、再発性の経過 A発熱や意識障害など他の神経症状を欠く。 BCTで器質性疾患を除外
一側の側頭部に限局する拍動性頭痛が特徴です。典型的片頭痛では頭痛とともに嘔気、嘔吐を多くの場合見られます。また、発作の前日から体重増加、顔や手足のむくみに気づくこともあります。左右一側の視野にきらきら光るぎざぎざの暗点(閃輝性暗点)がはじまり、さらにみえた側と反対の側頭部に拍動性頭痛が生じます。血管性頭痛では左右一側のことが多いですが、ときには両側頭部に強い拍動性頭痛が生じます。閃輝性暗点はみられません。
典型的片頭痛の診断のポイント @慢性、再発性の経過 A前兆として閃輝性暗点をみる。 B脳波、CTで器質性疾患を除外
一側の眼を中心にして、額から上顎部に限局する火箸をあてたような持続的な頭痛が特徴です。群発頭痛は、文字通り同じ頭痛が繰り返し2〜3週間のあいだ生じます。このとき眼球結膜や額が充血し、流涙、鼻水、Horner症候群を起こすこともあります。 頭痛の持続は20分‐2時間くらいですが、数週から数か月間にわたって1日1〜8回、特に夜間に頭痛が群発します(この期間を群発期と呼びます)。痛み発作のため夜目覚めてしまう場合こともよく起こります。その後、群発は寛解しますが数か月から数年に1回このような群発期がみらます。群発期には飲酒によって確実に頭痛発作が誘発されますので注意して下さい。片頭痛は女性に多いのと対照的に、群発頭痛は圧倒的に男性に多い病気です。
診断のポイント @慢性、再発性の頭痛 A眼窩を中心に火箸をあてたような持続性頭痛 B純酸素吸入が有効
両側の前頭部をギューッと圧迫するような特徴的な頭痛ですが、局所性てんかんの場合は病巣と反対側の頭痛が生じます。ときには圧迫される感じではなく、頭が膨張するような異常感覚を伴うこともあります。頭痛発作とともに上肢の振戦、あるいは感覚異常、さらに痙攣発作をみることがあります。これとは順序が逆ですが、全身痙攣発作のあとに頭全体がガンガンと痛むこともよくあります。
診断のポイント @前頭部を中心に、ギューッと圧迫するような頭痛 A振戦や感覚障害のマーチを伴うことがある B脳波に異常所見
両側の後頭部に板を張り付けたような重い頭痛ですが、ときには両側の側頭部に拍動性の強い頭痛を訴えることもあります。発作時の収縮期血圧は通常200mmHg以上になっているので診断は容易です。
診断のポイント @後頭部に張りついたような鈍痛または両側頭部の拍動性頭痛 A200/110mmHg以上の高血圧 B降圧剤服用にて消失
【2】急性頭痛のチェックポイント
突然、頭全体を締めつけるような頭痛が出現し、寝ても休んでも同じ強さで続きます。重症感があり、患者さんは憔悴しきっています。また嘔気、嘔吐を頻発し、意識障害を伴うこともしばしばです。血圧は一般に高く、眼底で網膜前出血をみます。37 ℃台の微熱を伴うこともあります。診察所見では、項部硬直、Kernich徴候などの髄膜刺激症状が陽性を示します。
診断のポイント @突然始まる、たがで締めつけるような激しい頭痛 A項部硬直、意識障害、ときに発熱 BCTで出血あり、髄液検査で血性髄液
頭全体の強い疼痛です。感染症ですから発熱を伴うのが特徴です。やはり重症感があり、患者さんは憔悴している。診察では項部硬直などの髄膜刺激症状が陽性を示します。重症例では意識障害を生じときもあります。
診断のポイント @発熱、項部硬直 A重症感 B髄液検査で細胞数、蛋白増加
前頭部あるいは上顎部を中心にズキズキと痛み、左右どちらかに限局します。一般に、かぜ症状のあと2週間ほどして一側の前頭部もしくは上顎部にズキズキとする頭痛が出現し、日に日に増悪します。ときには前額部が赤くなります。また疼痛の部位を叩くと強い痛みが出ます。もともと慢性副鼻腔炎をもっておられる場合が多く診断は比較的容易です。
診断のポイント @感冒後2週間後に発症 A一側の上顎または前頭部に限局。圧痛あり BCTで副鼻腔炎を認める
一側の側頭部がズキズキと痛みます。典型的片頭痛における場合よりはずっと限局した、側頭動脈周囲のみに疼痛が生じます。視力の低下も特徴的です。また、既往に多発筋肉痛(myalgia rheumatica)をお持ちの方もおられます。
診断のポイント @一側側頭部にズキズキッとする強い疼痛 A患側の視力低下 B血沈亢進
a 発作時の治療 いつでも発作に対処できるよう治療薬を携行をしてください。
発作の前兆あるいは予感が認められたら 直ちに以下の薬剤のいずれかを頓用。
1)セロトニン受容体作動薬であるトリプタン系の内服薬または注射薬 (内服薬)ゾーミッグ または イミグラン (注射薬)イミグラン これも血管収縮作用があります。同日に2)または3)との併用は避けて下さい。また内服すると一時的に胸がしめつけられるような感じが起こることがありません。大事には到りませんから、しばらく休んでいただければ消失します。その後に、きっと痛みが嘘のように軽快しますので、多くの方は大変喜ばれます。(^o^)
2) カフェルゴット(酒石酸エルゴタミンと無水カフェイン含有)1回 1錠
3) クリアミンA(酒石酸エルゴタミン、無水カフェイン、イソプロピルアンチピリン含有)1回 1錠 頭痛が軽減するまで30‐60分間隔で1日3錠まで、1週間最大量10錠です。 血管収縮作用があるため、冠動脈疾患、末梢血管患者、高齢者での使用には注意が必要です。
上記の処方が無効な例 通常の鎮静薬を内服して、静かに部屋の照明を落として安静にして痛みが収まるのを待って下さい。
b 発作間欠期の治療(発作予防) ひどい発作が頻発し、日常生活がとても障害される場合にβ遮断薬やCa拮抗薬が有効とされています。(β遮断薬は片頭痛の保険適用になっていませんが・・。) 処方例 下記のいずれかを用いる 4) テラナス(塩酸ロメリジン:Ca拮抗薬) 2〜4錠 分2 朝食後・夕食後あるいは就寝前 5) ハイパージール錠 2錠 分2 朝食後・夕食後
B 群発頭痛
頭痛時の治療 基本的には片頭痛発作時と同じですが、酸素吸入で効果がみられるのが特徴です。発作が生じたら医療機関にて、ただちに100%酸素(7〜8L/分)をゆっくり吸入すると痛みが改善されます。
また痛み出現後できるだけ早く、前記の片頭痛のお薬 1)、2)、3)のいずれかを試みて下さい。
群発期の発作予防 この期間は必ず禁酒を守って下さい。前記のお薬 4)あるいは5)を頭痛発作が消失するまで内服します。
C 緊張型頭痛
1 治療の基本 ストレスなどが誘因となることが多いので、可能な範囲で生活習慣・生活パターン、仕事の取り組み方、姿勢、睡眠不足などの改善を図って下さい。緊張した筋を弛緩させるための軽い体操や背筋を伸ばしたり、肩を廻したりすることも有効ですよ。
この種の頭痛では薬物療法は補助的な治療手段です。筋弛緩薬、抗不安薬、鎮痛剤などが用います。
2 肩凝りがある場合 ミオナールやセルシンを飲んでいただきます。あとは普通の鎮痛薬。
結果判定