高血圧 |
どんな病気? |
高血圧症は、脳卒中、心不全、心筋梗塞、腎硬化症など心・血管疾患を発症する最大のリスク因子です。 その治療の基本概念は、高血圧の持つ臓器障害リスクを最大限に抑制し、正常血圧者と変わらない予後を確保することです。 高血圧をきたす病因はさまざまであり、副腎腫瘍(原発性アルドステロン症や褐色細胞腫など)や腎血管性高血圧などのように原因が特定できる二次性高血圧は全体の10%未満に過ぎず、ほとんどが原因不明の本態性高血圧です。本 症は家族性負荷が強く、腎での食塩・水電解質代謝を介した体液量調節、交感神経系血圧調節機構、レニン・アンギオテンシン系血圧調節機構、血管内皮・平滑筋細胞機能など多面的な異常が認めらます。 人種、性差、高血圧の病期・重症度、合併症の有無などによって、その病態は個々の患者によって異なっており、治療も個別的に対応すべき場合が多いです。 現状では、高血圧者の1/4しか正常血圧レベルにコントロールされておらず、なお降圧療法の徹底が必要とされています。 診断のポイント 高血圧患者の診断は、次の各段階を踏まえて進めていく。家族歴および特異的な症候や検査所見の有無から本態性高血圧か二次性高血圧かを診断、閉塞性肺疾患、痛風、糖尿病、高脂血症、喫煙、飲酒、運動習慣など合併症や関連するリスク因子の存在を把握、左室肥大、心不全、狭心症・心筋梗塞の既往、脳卒中または一過性脳虚血発作、腎障害、末梢動脈疾患、網膜症など高血圧性臓器障害を評価して、高血圧の重症度を決定します。 血圧の程度と臓器障害の間に乖離がみられるときは、家庭血圧や24時間血圧モニタリングを施行して「白衣高血圧」を除外します。 |
治療は? |
高血圧治療ガイドライン2000年版 Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension (JSH 2000) WHO高血圧ガイドライン1999の日本人版です。 日本の実状を考慮して作成されています。以下に要点を示します。 【緒言】 1.降圧治療の普及により、心血管病とくに脳卒中の死亡は著減した。しかし、降圧治療の普及とコントロールはまだ不十分であり、厳格な血圧コントロールが望まれる。 2.公衆衛生上の高血圧対策では、従来から減塩指導が根幹であった。日本人の食塩摂取量は1975年の 13.5gから 1987 11.7gまで減少したが、その後増加に転じ 1995年 13.2gと1970年代に戻ってしまった。再増加の要因を分析すると共に減塩指導の再強化を図る必要がある。 【血圧測定と臨床評価】 1.高血圧の診断は少なくとも2回以上の異なる機会における血圧値に基づいて行う。 2.家庭血圧および24時間血圧は有用であり、日常診療の参考にするべきである。これらの値が135/80以上の場合は高血圧として対処する。 3.血圧値の分類はWHOの分類(1999)に従う。 4.血圧値の他に、その他の危険因子、高血圧臓器障害、心血管疾患の有無により低、中、高リスク群に層別化する。 5.高血圧の病態は、本態性高血圧(白衣高血圧を含む)、高齢者収縮期高血圧、二次性高血圧に分類される。 【治療の基本方針】 1.降圧目標は世界的に低く設定されつつある。若年・中年者および糖尿病合併者では正常血圧以下(130/85未満)が好ましい。高齢者においてはやや高めに設定する。 2.降圧治療は生活習慣の修正(第一段階)と降圧薬治療(第二段階)である。 3.生活習慣の修正は、食塩摂取量の制限、肥満であれば体重減量、運動療法、アルコール摂取量の制限、禁煙などである。 4.降圧薬の使用上の原則は1日1回投与の薬物で低用量から開始する。増量時には1日2回も考慮する。副作用の発現を抑え降圧効果を増強するためには適切な降圧薬の組み合わせがよい。 5.白衣高血圧患者は治療しない場合も6ヶ月毎に経過を観察する。 【生活習慣の修正】 1.食事に関しては7g/日の減塩や肥満者(BMI=22の標準体重の20%以上)における減量や適正体重の維持を実施する。 アルコールは男性で酒1合、女性は2/3合以下にする。 2.高脂血症の合併を防ぐためコレステロールや飽和脂肪酸の摂取を避ける。 3.運動療法は降圧効果があり、毎日30分くらいの運動が勧められる。ただし、運動療法開始前には心血管病の有無を確認する。 4.喫煙は虚血性心疾患や脳卒中の強力な危険因子であるので、禁煙を行うべきである。 5.これらの生活習慣の修正には患者の自覚が必要であり、そのためには患者教育の充実が必須である。 【臓器障害を合併する高血圧の治療】 <脳血管障害> 1.脳卒中発症1−2週間の急性期には出血、梗塞の病型を問わず血圧は高値を示すことが多い。しかし220/120以上でないかぎり積極的な降圧治療を行わないのが原則である。 2.脳卒中1ヶ月後も高血圧であれば150-170/95未満を一次目標にCa拮抗剤、ACE阻害剤で降圧治療を始める。2−3ヶ月後より140-150/90未満を最終目標に降圧治療を行う。 <心疾患> 1.狭心症を合併する高血圧では長時間作用型Ca拮抗剤や内因性交換刺激作用のないβ遮断剤がよい適応になる。140/85未満を目標にする。 2.心筋梗塞の患者ではβやACE剤がよい適応。 3.心不全を合併する高血圧では十分な降圧治療が重要である。ACE剤や利尿剤が適応。 <腎疾患> 1.血圧のコントロールが腎不全の予後に極めて重要。 2.生活習慣では食塩制限と蛋白制限を行うと共に激しい運動や過労を避ける。 3.降圧目標は130/85未満とする。 4.ACE剤は蛋白尿を減少させ、腎保護作用を発揮するがクレアチニン3.0以上では使わない。Ca剤は高度の腎機能障害でも安全に使える。利尿剤は体液貯留傾向にある時に不可欠であるが、クレアチニン2.0以上ではループ利尿剤を用いる。 【他疾患を合併する高血圧の治療】 1.糖尿病患者では降圧目標を130/85未満としてACE剤、長時間作用型ジヒドロピン系剤、α剤を第一選択薬とする。労作性狭心症や陳旧性心筋梗塞例では少量の利尿剤とともにβも使用する。単剤で効果不十分な場合は他剤に変更してそれでもダメなら併用療法を行う。利尿剤が未使用なら追加する。 【高齢者高血圧】 80歳前半までは積極的な治療を行うべきである。ただし、70歳代以降では160-170以上、90以上を治療対象として降圧目標も160/90未満と緩徐な降圧に心がける。 |
高血圧治療ガイドライン2000年版ガイドラインにそった あなたの年令、血圧に加え、糖尿病やコレステロール値、中性脂肪値など、心臓病の危険因子の有無を考慮して、あなたの血圧の評価と治療のアドバイスが受けられます。是非下記のページを見て下さいね。 |
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