下痢と嘔吐・・・感染性胃腸炎について | |||
どんな病気? |
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●原因
最も多いのはウイルス性胃腸炎で、特に冬場に乳幼児がかかる嘔吐下痢症は症状が強く注意が必要です。主にノロウイルス(以前は小型球形ウイルスと呼ばれていました)、ロタウイルス、アデノウイルスなどが原因となります。 ただし下痢や嘔吐の全てが異常とは限りません。よく飲む赤ちゃんの嘔吐や離乳食の種類による一時的な下痢、泣いたり興奮したりすると吐きやすい、などはよくみられる特に異常とは言えない症状ですが、心配なら一度ご相談下さい。また,他の病気による嘔吐や下痢の場合もありますが、ここではウイルス性胃腸炎を中心にして話を進めます。 ●症状 嘔吐が症状のはじまりである場合が多く、最初の半日〜1日は吐き気が続きます。次第に下痢の回数が多くなり、食べたり飲んだりするたびに出るようになります。水のような便になり、ロタウイルスが原因の場合便の色が白くなってきます。熱や咳、鼻水などが一緒にみられることもあります。全体の経過は1週間程度で、嘔吐のみられる最初の時期さえ乗り切れば、あとは適切な食事療法で自然に回復に向かいます。 回復期に無理をすると、下痢が数週間も長引くことがあります。 ●合併症 脱水症です。脱水に陥らないようにするためには、普段とっている量の2/3を目標にして水分をとらせて下さい。吐き気があるときにも最低で普段の半分くらい合間にとれていれば点滴せずにすむかもしれませんが、脱水が心配なときには早めに受診するようにして下さい。脱水がひどいときには、外来点滴か入院が必要になります。外からみてわかる脱水の目安は、肌が乾燥して汗をかかない。顔色が青白い、唇が乾いて口の中へ入れた舌圧子がべっとりとくっつく。おしっこが少ない。乳児で大泉門が陥没するなどですが、これらの症状が出ているときにはすでに脱水は進みかけていますので急いで受診するようにして下さい。 ●治療 治療の第一は食事療法で、薬は二の次三の次です。 具体的なやり方は下に書きますが、考え方としては、まずお腹を空っぽにする。そのあとは水分補給を中心にお腹の負担にならないように栄養をとりながら、ウイルスで荒らされた腸の粘膜が自分の力で再生してくるのを待つ、ということが目標になります。 薬物療法 嘔吐→吐き気止めとしてナウゼリン坐薬を主に使います.3歳まで10mgを1個、学童30mgを1個が普通に使われる量です。症状のひどいときに1回だけ使うつもりで、残りは予備にとって置いて下さい。入れてから1時間は何も飲ませず、そのあと下に書いたようなやり方で水分補給を再開していきます。 整腸剤→乳酸菌・ビフィズス菌製剤(ラックビー,エンテロノンRなど)と腸の蠕動を調整する薬(ロペミン)を使います。吐き気がなくなって水分がとれるようになってからでかまいません。ロペミンは急性期にだけ処方します。 家庭でのケア 嘔吐下痢症を上手く乗り切れるかどうかは、家庭でのケアによって決まってきます。 第一の目標は水分補給です。次の3段階に分けて考えて下さい。 1)吐き気が強い間 しばらくは何も飲ませずにお腹を空っぽにします。この時期に無理に飲ませようとすると再び吐いてしまい悪循環になりますので、飲みたがってもまずガマン(最低1時間〜数時間〜最高で一晩程度)。 2)吐き気が少しおちついてきたら 水分を少しずつ飲ませはじめます。コツは「少量ずつ,回数を多くして」です。最初はスプーン1杯、30分様子を見て吐かなければ次はコップで一口、また30分後には2口、というように根気強くとらせていきます.もし吐いたら1) からやり直しです。 飲ませて良いもの:アクアライト、番茶、お湯、うすめたリンゴ果汁など 3)下痢だけになったら 便の様子を見ながら少しずつ消化の良いものを与えていきます。 いつでも大丈夫 母乳 乳児:母乳の場合 母乳はそのまま続けてかまいません。ただし「少量頻回」の原則は同じです.母乳でも吐いてしまう場合は白湯やアクアライトのように胃の中に残らないもので一時的にしのいでみて下さい。良くなってきたらいつも通り欲しがるだけ飲ませてかまいません。 乳児:ミルクの場合 当初はミルクを半分に薄めて与えます.「少量頻回」はここでも同じです,吐き気がなく下痢だけになったらミルクの濃さを2/3→普通の濃さに戻していきます(便性をみて濃さを調節する必要はありません)。 ラクトレスやボンラクトなどの治療乳を使う必要はほとんどないはずです. 乳児:離乳食が始まっていた場合 最初は離乳食を中止して水分だけにします(母乳,アクアライト,番茶野菜スープ、みそ汁の上澄み、リンゴのすりおろし)、下痢が良くなっていたら、おかゆ、うどん、にんじんやかぼちゃの煮つぶしなどを便の様子を見ながら食べさせていきます。 離乳食がある程度進んでいた場合は,ミルクにこだわって長引かせるより、おかゆを中心にして栄養をとらせていった方が回復が早いようです。 幼児期以降 急性期の原則は乳児と同じです。まずは水分補給、良くなってきたら便の性状をみながら食べ物を決めていって下さい。 便が水のようなとき→水分を中心に 便がドロドロなら→ドロドロの食べ物を 便がやわらかい程度なら→やわらかい食べ物を |
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食べてよいもの | |||
下痢の激しいとき(水様便) 湯冷まし、薄めた番茶、重湯、ニンジンスープ、リンゴをおろした汁、ソリタ顆粒 |
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下痢が回復または軟便時 おかゆ、柔らかくにたうどん、食パン、薄い味噌汁 |
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食べさせないほうがよいもの | |||
冷たいもの、 刺激の強いもの 清涼飲料水(特に炭酸の入ったもの) |
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脂肪の多いもの 揚げ物 |
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繊維の多いもの イモ、ゴボウ、ワラビ、ゼンマイ海草類、菜っ葉、豆類 |
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砂糖分の多いもの
カステラ |
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治ったあとの注意 | |||
食欲や元気が出てきたら便がまだ柔らかくても入浴など普通の生活に戻していってかまいません。まだお風呂には入れないときにはお尻だけ洗ってあげるようにしましょう。治りかけに食事で無理をすると長引くのは上に書いたとおりです。下痢がひどいときにはポリオの経口生ワクチンは飲めません。その他の予防接種は一般的なかぜに準じてよくなってしばらくしたら受けられますのでそのつど確認して下さい。 |
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関連サイトへのリンク | |||
ノルウイルス関連 国立感染症研究所感染症情報センター 感染症発生動向調査週報: |