夜尿症(おねしょ)

どんな病気?

(定義)
通常5才を過ぎても夜尿が多くみられる場合を夜尿症といいます

(頻度)
夜尿症は6才で6〜15%、10〜11才を過ぎると2〜3%にみられ、男の子の方が多い傾向にあります。

(タイプと病気の原因)
夜尿症は一次性と二次性に分けられます。

 一次性の夜尿症とは、生まれてから、現在に到るまで、ずっと持続しているもので、以下の四つが大きな原因です。
@未熟なため膀胱の尿保持力が悪い。(機能的膀胱容量が小さい)
A機能的膀胱容量以上に夕方水分を摂取した。
B抗利尿ホルモンが十分に分泌していないため多量に尿が作られる。
C子供の眠りは深く、尿意を催しても上手に覚醒できない。

  治療はその未熟性を改善、補助するための生活指導、薬物療法が中心となります。

 一方、二次性の夜尿症とは、1年以上、夜尿がなかったにもかかわらず、ある時点から起こってきたもので、心理的要因が強く、生活指導、薬物療法とともに心のカウンセリング治療も必要となります。

(対応の仕方)
 夜尿症は必ずしも病気と考える必要はないのですが、本人がとても気にしたり、集団生活で困る局面では適切な対応が必要でしょね。 夜尿症をもつお子さまは、劣等感、自信喪失、ものごとへの消極性などのためにもっている能力を十分に発揮できないでいる場合が多いといわれています。このため夜尿症の治療は、親御さんの夜尿への偏見を取り除くための十分な説明や、本人の精神状態を安定させることも含まれます。

 一般的には就学後(6歳以上)になっても夜尿症が見られる場合が治療の対象となります。

● おねしょの病型分類

 治療を行う前に昼間排尿量、夜尿量(おねしょの尿量)、夜間睡眠中の全尿量、起床時尿比重より以下の病型分類を行います。

●膀胱型

(別名、「排尿機能未熟型」または「ちょぴり頻尿型」):

昼間の1回排尿量および夜尿量(1回あたり)が5ml/kg以下のとき

●多尿型 (別名、「多量遺尿型」または「ぐっしょり型」):
夜間睡眠中の尿量が1時間あたり1ml/kg以上、起床時尿比重1.022以下のとき
●混合型 両者がみられる場合
●正常型 いずれもみられない場合

それぞれのタイプと身体的な特徴(下の図)


●生活上のアドバイス

●膀胱型  排尿の抑制を主体とした継続的な膀胱訓練を行います。特に昼間からお漏らしをする場合には意識的に排尿抑制を行うだけで改善をみることが多いです。
 膀胱訓練の前に、膀胱尿管逆流症を含め先天性の腎尿路奇形を除外しておく必要があります。
●多尿型  塩分摂取制限(5g/日以下)、夜間睡眠前3時間の飲水・飲食の制限が中心となります。特に夕食での飲水については夜尿改善の決め手になる場合が多く、献立、食事の取り方の工夫が大切です。
●混合型  膀胱訓練、食事指導の両面からの生活指導が必要となります。

 

●おくすりによる治療

 生活改善を1〜3か月試み、それでも効果のない場合に薬物療法を行います。

●膀胱型

 乳児期にみられる生理的な不安定膀胱の状態が持続していると考えられており、抗コリン薬、三環系抗うつ薬を使用します。膀胱型のうち昼間の1回排尿量、夜尿量(1回あたり)ともに低下しているものには抗コリン薬を第一選択として用います。

 また上記薬剤により昼間の1回排尿量が増加(改善)したけれど、夜尿量(1回あたり)の増加が不十分な場合には三環系抗うつ薬を併用します。効果が出てきた後は少なくとも3か月は同量の投与を継続し、以後半量投与、隔日投与など徐々に減量するという方法をとります。

 副作用:普段から便秘をもっておられるお子さまの場合は、抗コリン薬投与は便秘を助長することがあります。また三環系抗うつ薬投与では一般的にいわれている悪心、嘔吐、食欲不振などの消化器症状を伴うことがあります。

●多尿型

 多尿型のお子さまは、抗利尿ホルモンが睡眠中に十分分泌されないので、その程度が強い場合には食事療法の効果には限界があります。食事療法で夜尿の改善が不十分な場合には抗利尿ホルモン薬の夜間睡眠前投与を行います。(三環系抗うつ薬も抗利尿作用をもっており、有効な場合がありますが、多くは、その効果は不十分です。)

 (参考)抗利尿ホルモン薬(デスモプレシン)について
 点鼻薬のため体内への吸収が不安定で、特に鼻炎がみられるときには効果が落ちるので注意が必要です。起床時尿比重(1.030以上)を確認し、投与量を調節しながら使います。効果発現後は少なくとも3か月は同量の投与を継続し、以後半量投与に減量し、6か月間夜尿のないことを確認して中止するのが一般的です。
 抗利尿ホルモン薬は、おっしこを作らなくするホルモンですので、使用前1〜2時間はキチンと水分制限をしておかないと体内に水が貯留(水中毒)してしまいますのでご注意下さい。他の大きな副作用はありません。

●混合型  抗コリン薬と抗利尿ホルモン薬および三環系抗うつ薬の併用が原則ですが、まず抗コリン薬投与により昼間の1回排尿量、1回夜尿量が十分に増大しても夜尿が続く場合に抗利尿ホルモン薬も使用します。
 

おくすりの実際の飲み方

●抗コリン薬:膀胱を弛緩させ尿の保持量を増加(=膀胱容量の増大)させます。膀胱型夜尿症に効果。
 ・バップフォー(20mg)1〜2錠 夕食後
 ・ポラキス(3mg)1〜2錠 夕食後
●三環系抗うつ薬:睡眠の浅化作用によって、夜間の覚醒を容易にするものです。
 ・トフラニール(25mg)1錠 眠前
●抗利尿ホルモン薬:多尿型夜尿症に効果。また修学旅行などで一時的にも夜尿を止めたいときに有効です。
 ・デスモプレシン(10μg/0.1ml)0.1〜0.2ml 眠前

 

●アラームによる覚醒療法(条件づけ法) ●

 おしっこがかかると鳴るブザーの装置の助けをかりて、夜尿をした直後に、親御さんがお子さまを起こすことを繰り返すというやり方です。

 (膀胱の緊張)⇒夜尿のすぐあとに、(ベルで)おこす⇒おきる、という無条件反射をもってくることで、
(膀胱の緊張)⇒おきる(あるいは、睡眠の浅化)とい条件反射が形成されると考えられています。
  年長児で種々の生活指導、薬物療法に反応しない膀胱型、混合型に試みます。もっとも高い治癒率(半年ほどの経過で70%前後)です。
ドライスリーパー  (通販で購入できます。

 

予備知識ができたところで、早速、あなたのお子さまの「おねしょ」を コンピュータで診断 してみましょう!

●準備するもの

尿測定用紙コップ 昼間および朝起きて一番目のおしっこの量を測定します。
オムツ 夜間尿量測定用
オムツの重量測定用はかり 家庭にある調理用のはかりでもいいですが、オムツを計るのはちょっとね。そこで100円ショップで買ってきましょう。お漏らしした夜のオムツの重量を測定し、オムツ単独の重量を引き、夜間のお漏らし尿の量を算出します。
尿比重測定用
テステープ
当院でお渡しします。
●入力項目をあらかじめ準備しましょう。
昼間の一回の排尿量 何回か測定し平均を出しましょう。
夜尿量
1回あたり
1回だけのお漏らしをめざとく見つけ、そのときのオムツにお漏らしした尿量を計ります。夜間に2度以上お漏らしをする場合は、そのつど、オムツを新しい物に変えて、朝まで回数分だけ繰り返し測定してみましょう。すばらしい結果が出ます。こうなれば、もう「おねしょ」研究に関する、どこへ出しても恥ずかしくない立派なデータとなるでしょう。自慢できますよ! (*^_^*)
何回か測定し平均を出しましょう。
夜間睡眠中の全尿量

夜間のオムツにお漏らしした尿量と起床時の第一番目に出した尿量の合計です。

(注意)就寝直前に排尿してから寝ます。このとき排尿した尿は「夜間睡眠中の全尿量」に含まれません。

起床時尿比重 尿比重測定用テステープで測定します。
 
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