だいじな赤ちゃんが発熱したら・・・ |
近所のお母さんが「熱は下げなくていい」って言ってたけどぉ・・?(-_-;) |
これまで ほとんど病気をしたことがない赤ちゃんも、6ヶ月を過ぎたらとたんに発熱してきますよね。大切な赤ちゃんのことですからとても心配でしょう。6ヶ月くらいから急に発熱してくるのは、お母さんのおなかにいるときもらった免疫が、この時期になくなってしまうからです。 赤ちゃんは大人より少し平熱が高いので、37.5℃以上になれば熱が出てきたと思ってよいでしょう。 発熱をみたときは、咳、鼻水など他の症状がないか、機嫌や食欲はどうかなど、よく観察し、水分を十分に与えましょう。 そして、熱が出て暑そうにしていたら、おでこや脇の下などを濡れタオルや冷えピタなどで冷やして上げましょう。衣類は普段通りでいいと思います。また汗をふき、衣類や寝具はこまめに取り替えてあげて下さい。ご注意ください。高熱がびゅんびゅん出ている赤ちゃんに「おくるみ」を一杯着せて病院に連れて来られるお母さん方がたくさんおられます。これはかえって逆効果です。熱が高くて暑そうにしていたら、衣類はたくさん着せないことです。衣類をたくさん着せるのは、せいぜい、熱の上がり初めの悪寒があるときだけですよ。 |
38.5℃〜39℃くらいで赤ちゃんが、とてもひどそうなら解熱剤を使って下さい。逆に39℃程度でも元気なら必ずしも必要ではありません。 日頃から冷蔵庫の中に数本用意しておいた方がよいでしょう。 |
解熱剤の使用については、一部に否定的な意見があります。 |
否定的な意見 その(1) 「熱下げは病気を治すことではないから解熱剤は使わない!」 |
「熱下げは病気を治すことではない。」・・・これはまさにその通り! ただし、お母さんの中には40℃の高熱で赤ちゃんがうんうんうなっているにもかかわらず、放置しておられる方がおられます。ご自分が熱が出たり、頭がズキン、ズキンと痛かったときのことを思い出してみて下さい。きっと解熱鎮痛剤を使用して、痛みや熱がスゥーとひいて楽になって、夜はぐっすりお休みになられたことでしょう。私は、適度な使用は、体調を整えるために必要と考えています。(*^_^*) |
否定的な意見 その(2) 「発熱は体の防御反応だから、解熱剤を使用して熱を下げると、かえって熱のある期間を長引かせる。つまり病気の治りを悪くしてしまう。」 |
これは大阪市立大学の小児科医の発表で動物実験の結果より、報告されたものです。まだ一般的な見解として多くの小児科医に受け入れられていないと思います。一般の小児科医は、臨床的に有熱期間が長引くという印象は持っておりません。解熱剤を使用して、ゆっくりと睡眠がとれると体調も整い早く病気も治ると考えています。今後の研究が待たれるところです。 |
否定的な意見 その(3) 「解熱剤は脳炎を誘発する。」 |
名古屋大学小児科の脳炎の専門家、森島教授から「インフルエンザにかかっている患者さんに商品名ボルタレン(一般名ジクロフェナク)を使用した際、統計的に、有意に脳炎死亡例があった。」と報告されました。これを受けて、厚生労働省は、2000年12月に各医療機関に「インフルエンザ脳炎患者にはジクロフェナクは使用しないように。なるべくアセトアミノフェンの解熱剤を使用するように。」と通知し、現在に到ります。 ここで注意していただきたいのは、森島教授ご自身がおっしゃっているのは、あくまで疫学的に脳炎死亡例とジクロフェナク使用例の統計学的な関連性があったという事実だけで、これの解釈としては二つあるわけです。一つは、ジクロフェナクが脳炎を誘発して死に至らしめた可能性あり、ということです。しかし、もう一つは、すでに脳炎を起こして高熱がビュンビュン出ている患者さんに、上述したアセトアミノフェンのような解熱効果の低い解熱剤では効果がないため、次の手段としてジクロフェナクを単に使用しただけかもしれないという事実です。つまりジクロフェナクを使用することとは無関係にすでに脳炎が進行しており死亡の運命にあったのかもしれないという可能性です。 2001年5月から商品名ポンタール(一般名メフェナム酸)も同様な理由でインフルエンザ脳炎には使用を控えるようにと厚生労働省から通達されております。 更なる研究がなされるまでは、当面インフルエンザにかかった疑いのある乳幼児(1〜5才)には、アセトアミノフェンの解熱剤(商品名アンヒバ、アルピニー、カロナールなど)を使用することになるでしょう。 国立感染症研究所の感染症情報センター
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●こんな考え方は間違っている? |
○赤ちゃんの発熱は「知恵熱」なので心配ないって本当? |
「知恵熱」というものは医学的にはありません。少し昔はウイルス感染という概念すらありませんでした。お母さんからもらった免疫が切れる生後6ヶ月頃から、とたんに赤ちゃんは、ウイルス感染による発熱を起こしてきます。このような発熱は、昔の人には何か成長の一段階に関係する特別な生体反応と捉えていたんでしょうね。確かにウイルス感染の多くは自然に時期が来て治るわけですから大事に到らぬものも多いわけですが、いつもそうとは限らないのは、賢明なお母さん方はよくご存知ですよね。 |
○熱があるときには布団をかぶせて部屋を暑くして汗をかかせる方がいいの? |
これは今でも特におばあちゃんがそうさせていることがありますが、小さな子では熱の逃げ道がなくなり時として危険な場合があります。絶対にやってはいけません。汗は外から温めてかかせるのではなく、中から熱を下げるために出てくるものです。 |
○熱があるときには部屋を閉めきって外の風をあてない方がよいかしら? |
これも全く根拠がありません。部屋の中はウイルスが充満しています。寒い季節でも閉めきらずにときどき空気を入れ替えて外のフレッシュな空気を吸わせてあげましょう。ちなみに、部屋の温度は20℃、湿度は60%以上を目安に調節してあげて下さい。 |
○熱が下がってもかぜがすっかり治るまでお風呂に入れてはいけないの? |
これもよくみられる間違い。お風呂の入り方のページに書きましたが、熱が微熱程度になればお風呂に入っていけない理由はありません。食欲や元気が出てきたら、ぬるめのお風呂にざっと入れてあげると気分も良くなり新陳代謝をはかることもできます。 |
○前の晩熱があったが朝起きたら下がっていたので幼稚園に行かせたけど・・・? |
これもときどきみられます。熱があるとすぐにクスリ、クスリと騒ぐくせに、熱が下がると休ませたくないので無理させて学校や幼稚園に行かせる。これではなかなか良くなりません。熱は上がり下がりしながら経過するのが普通ですので、朝下がっていても夕方になるとまた上がってくるのはごく普通の経過です。学校や幼稚園は、熱が少なくとも丸1日以上出なくなり食欲や元気が回復してからにしましょう。 |
○高い熱が出ると頭をやられるの? |
これは現在では心配ありません、おそらく昔まだ脳炎や髄膜炎の診断がきちんとされていない時代にそのようなことが言われたのだと思いますが、今はそのような病気があれば見逃すことはありませんからご安心下さい。普通のかぜなどの熱だけで頭をやられることはありません。(^o^) |
○赤ちゃんはお母さんからの免疫があるので熱は出ないの? |
これも間違い。お母さんがかかったことのあるかぜの免疫はありますが、かかったことのないものには赤ちゃんもかかります。また、その免疫も3か月を過ぎる頃から急速に弱まってきますので、4-5か月になればいつ風邪をひいてもおかしくありません。なお、生後3か月未満で熱がでた場合には熱の原因が隠れている場合がありますので、素人判断で様子をみずにすぐに受診することが必要です。 |
○注射をすると、「かぜ」が早く治る? |
「注射が一番!」なんて考えていませんか? (理由1) (理由2) |
一口メモ 「ウイルス感染と細菌感染」 |
「かぜ」の8割くらいがウイルス感染で、残りが細菌感染です。ご存じのようにウイルスを殺す薬は、水痘ウイルスやインフルエンザウイルスなど特殊なものを除いてありません。このため「かぜ薬」と言っても、根本治療の薬ではなく、せいぜいで症状を改善したり細菌の二次感染を予防するものです。病気そのものは 赤ちゃんの免疫で数日かけて治すしかありません。幸いウイルス感染は重症なものは少ないので安心です。 一方、細菌感染は頻度的には少ないのですが、肺炎など重症化するものが多く、抗生物質を飲まなければ どんどん悪化します。必ず薬が必要です。 以上の二つの感染症の鑑別は 実際にはなかなか難しく、38℃以上の熱が半日以上続くなら一度病院を受診された方がよいと思います。 |
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