ぎょうちゅう(蟯虫・ぎょう虫・ギョウ虫)

蟯虫をやっつけよう!

正しい飲み方                         

まずは飲む前に

★部屋の清潔(布団の日干し、シーツの交換、寝室の床の掃除機がけ) ★身体の清潔(爪切り、肛門の洗浄、下着の取り替え)

いざ飲むとき
★家族全員でほぼ同じ日に

飲んだ後も
★2週間は毎日、 朝起床時一番にお風呂場で肛門洗浄と新しい下着の取り替え 寝室の床の掃除機がけ

 

実際の飲み方

 大人は1回量5錠です。小児は体重にあわせた量を服用していただきます。(錠剤と粉薬がありますので服用しやすい方を飲んで下さい。)  食事に関係なく、1日のうち いつ服用していただいても結構です。薬は一気に、1回量(例えば大人なら5錠)全部飲んでいただきます。大粒で数が多く飲みにくいでしょうが、がんばって飲んで下さい。10〜14日後にもう一度同じ量を飲んでいただきます。

蟯虫は退治できるか?

はじめに                                     

毎年春と秋に、あちこちの保育所や幼稚園でセロテープによる蟯虫の検査が行われますね。そして検査が陽性だった子供に駆虫剤(コンバントリン)が投与されます。家族全員が駆虫剤を10日から14日ほどあけて2回服用するのが最も一般的です。ところが何度コンバントリンを飲んでも蟯虫が退治できないお子さんが出てきます。  これについて説明しましょう。  これは蟯虫の生活環に密接に関係します。  

初めて口に入った蟯虫卵は生育し幼虫になり約45日で成虫になります。成虫はわれわれの盲腸で生活をします。その後2週間で産卵期を迎えます。産卵期にはメスが夜間、肛門へ出てきて、そこで産卵します。1時間の間に7,000〜10,000個の卵を産みつけると言われています。そして産卵を終えた母虫はヒトの体内へ戻ることなく力尽きてすぐに死んでしまいます。ですから理論的には薬を飲まなくても再感染さえ起こさなければ(蟯虫卵を口に運ばない!)蟯虫は自然に駆除されうることは覚えておいてほしいものです。  一方産みつけられた卵は、虫の産卵時にもたらす掻痒感から、夜中に無意識に掻いた手指に付着して、翌日容易に口から感染します。

また下着、パジャマに付着した卵から感染したり、布団や畳、床の上に散らばった卵が、布団の上げ下ろしや掃除のときに空中に舞い上がって、それを吸入することによっても感染します。卵は冬場で7日以上、夏場で3日程度、春秋には40日以上も生存可能ですから、蟯虫をお持ちのお子さんのご家庭では家族全員が絶えず感染の機会に曝されているといっても過言ではありません。  以上の蟯虫の生活環を踏まえた上で、いつお薬を飲むのが効果的か考えてみます。実は駆虫薬は成虫に対してよりも、小さい幼若虫には効果が少ないのです。これは子虫は口が小さく十分にお薬を飲めないからと言われています。したがって第1回目の服用時に、まだ卵であったものや子虫であったものが、時間をずらすことにより成虫に近い状態に成長させてからもう一回、駆虫を試みることが効果的となるわけです。 それでは一体なぜ再陽性になるのでしょうか?   賢明なみなさん方なら以下の可能性をお考えになる でしょう。もう正解はおわかりになりました?

問題  薬を飲んでも再検査で陽性になる理由は?
     次の中から最も考えられるものを選べ。

(1) 薬が効かないのでは?

(2) 飲む回数少ないのでは?(2回飲むより3回の方が効きそう?)

(3) 再感染するから?

実は、正解はBです。せっかく、高いお金を出してお薬を飲んでも、お子さんの肛門や、シーツ、ドアの取っ手、いろんな所にうじゃうじゃ蟯虫の卵がいるんです。またご家族全員で飲まない場合には、家族からうつることもありますし、集団生活をする保育所や幼稚園でも一人蟯虫卵をもっている子がクラスにおれば、再感染は免れないでしょう。でも、特にお子さん自身のお家での再感染の機会が一番あることを強調したいと思います。お子さんは直接、卵のついた指をなめることもあるでしょうし、床にこぼれた卵が空中に舞って、それを吸い込むことによっても起こるわけですから、感染の機会はとても多いことを改めて肝に銘じて欲しいと思います。

 

上の図は、いろいろな感染機会と、駆虫薬の効果を示しています。 は駆虫が成功したことを示しており感染ケース@〜Cでは、うまくいっているわけですが、感染ケースDおよびEは駆虫薬を飲むタイミングが悪く、2回目の薬を飲んでいるとき、卵または幼虫であったため感受性がなく生き延びた例です。薬と薬の間に感染したケースEのようなことは、いつでも起こるわけですから、環境整備をしないでかりに3回、4回薬を飲んでも同じことです。Cost-benefit(かかる費用とそれに見合う効果)の面からも3回服用は意味はないと思われます。

「メルクマニュアル」という世界で最も権威のある医学の教科書には下記のような記載があります。蟯虫の影響が有害ではあることは比較的少なく、治療は必ずしも必要ではない。通常は2週間間隔で2回駆虫剤を投与する。家族一人のみの治療は効果がない。注意深く手洗いをしても蟯虫の寄生の抑制や治療にはあまり効果がない。蟯虫に再び感染したときは以下の極端な方法に従えば家族における蟯虫を完全に駆除できる。つまり
@ 家族全員がコンバントリンを服用する。
A 家族全員が休暇を取って3週間家を出て毎晩違う 所に泊まる。
B 2週間目の終わりにもう一度コンバントリンを服用する。
 バカンスの多い欧米ならともかく、日本ではこのようなことは実際、多くの場合は不可能でしょう。ですから何度飲んでも蟯虫が陽性になる人は蟯虫退治にあまりに神経質にならず、日頃から爪かみなどの悪癖を直し、清潔に心がければ、いつの日か自然に蟯虫がいなくなります。どうぞ安心して下さい。 以下に日本で行われている具体的な駆虫方法を再度まとめて終わりにさせていただきます。

推奨される駆虫方法
(1)駆虫後2週間くらい、お部屋の掃除を徹底的にする。
(2)お子さんの布団を日なたに干す。
(3)爪を短く切る。爪かみをさせない。
(4)蟯虫陽性のお子さんには、朝起きたらすぐにお風呂場で肛門をきれいに洗ってから、清潔な下着(できたら70℃以上の熱湯をかけたもの)をはかせる。