ことばの遅れ(言語発達遅滞)・どもり

ことばの遅れ(言語発達遅滞)

 言葉の発達には「理解力」と「表出力」の2側面があります。普通は「表出の遅れ」で気づかれることが多いようです。

 言語表出の標準的な発達から明らかに遅れている場合、例えば、1歳半までに意味 のある単語を話さない。3歳までに二語文を話さないときは明らかな遅滞と考え、原因を探りつつ治療を行います。

 言語理解については、1歳半までに2〜3のありふれた言語の理解ができない、2歳までに簡単な言語指示に従えないときは明らかな遅滞と考えます。

 また、それほど明確でない軽度遅滞の場合、例えば、1歳半までに複数の有意味語 を話さない場合は、「ことばを育てる」育児法を行いながら経過を観察します。

 他に全く異常がなくて、言語表出のみ遅れる子どもは、2〜3歳頃に発語が急に伸びて正常範囲に到達することが少なくありません。

 言語発達遅滞の原因として、聴力障害や発達性言語障害、精神遅滞、自閉症、養育環境不適などが上げられます。まず最初に、難聴のスクリーニングが不可欠で、左右の指擦音(指をこすり合わせて出す小さな音)への振り向き反応や、ささやき声による絵カード指しなどで聴力を確認する必要があります。ご家庭でも簡単にできますからやってみて下さい。

 さらに小児科では身体的なチェックに加え、遠城寺式検査などを使い、言語理解、表出、視覚的操作能力などを総合的に評価します。

 4歳以上に対しては、ITPA検査の言語理解、言語類推、聴覚記憶項目に、簡単な発音テスト(「パ」「タ」「カ」「パタカ」)、舌運動、人物画知能検査などを行います。

 これらをもとに、親に子どもの現在の状態をよく認識してもらうことが、その後の治療・指導を進めるうえ重要です。

■精神遅滞

 言語の理解・表出だけでなく視覚的理解力にも遅れがあれば、精神遅滞が疑われます。これは言語発達遅滞の最も多い原因です。この場合は、発達レベルに応じて生活体験や言語刺激を豊富に与えるとよく、親子遊びグループや集団保育などが発達の刺激になってお勧めです。

■言語障害

 言語理解および表出の混合障害、表出のみの障害、構音の障害が含まれます。これらに対する幼児向きの言語訓練プログラムは最近、著しく進歩してきています。早めに専門機関に紹介し、言語治療を開始した方がよいでしょう。

 親御さんのご家庭での工夫点としては以下のようなものがあげられます。

 1)言語表出よりもまず理解力をつけて下さい。特に物や行動を伴った活動がよいでしょう。たとえば 「○○を持ってきて」の言語指示を毎日行って下さい。お子さまの発達段階に合わせて、同時指示を2語、3語と増やしていきます。

 2)お子さまのコミュニケーションの意欲を育てるよう努めて下さい。たとえば欲しい物を「お茶? 牛乳?」などと聞いて意思を表現させてみて下さい。

 3)傾聴態度を育てるよう工夫もして下さい。お母さまがお子さんの顔を見て、明瞭に、短い言葉で話します。絵本の読み聞かせも大変よいと思います。

 4)広い意味の社会性を育てる工夫も大事です。地域の親子遊び教室や幼稚園・保育園などに積極的に参加させて下さい。

吃音(どもり

 単音、単語、文節などを繰り返したり長く伸ばすことが、明らかに話の流暢さを損 なっている場合に吃音といいます。幼児期、特に多語文が増える2〜4歳頃には、言葉がつかえて吃音のような状態が生理的に起こります。

 周囲が気にしたり、言い直させたりすると、心理的緊張が強くなって吃音が持続し やすい。逆に、親が子どもの話をゆっくり聞くようにしていると、自然にしゃべれる ようになることが多いので、心理的なリラックスを心がけるようしてください。多くは親の「焦りがお子さまの症状を長引かせている」ことにご注意下さい。

参考

(参考)

乳幼児の発達を評価するテストが概観できます。
http://www.amy.hi-ho.ne.jp/yamaokash/test00.htm

 ITPA言語学習能力診断検査は、子どもの知的能力の発達(コミュニケーション)という側面から様々な能力の個人内差を明らかにします。その子どもに最適な治療プログラムの作成に直接役立つ手がかりが得られるという大きな特徴をもち、知能や言語の発達に問題をもつ子、LD児(学習障害児)などの治療教育に適切な資料を提供する検査として幅広く用いられています。

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