帰ってきたアタマジラミ  

 80年代後半の10倍超 感染経路、不潔さと無縁

どんな病気?

  

アタマジラミ(メス)(写真は国立感染症研究所昆虫医科学部提供)  

 戦後のDDT散布の光景は遠くなりましたが、アタマジラミがここ数年、保育園や小学校の子どもたちの間で増えています。最近のアタマジラミは不潔さとは関係がなく、専門家は「パニックにならないように」と呼びかけています。都市化や海外との交流が進んだ先進国共通の課題だとの指摘もあるほどです。  

 ある保育園では6月、保護者にアタマジラミの撃退法を書いたパンフレットを配りました。

 「DDTを頭からかけられ、まっ白になったのは過去の話。シラミを正しく認識し駆除することが大切です」と訴えています。

 東京都もホームページで「お母さん、私を見つけても驚かないで!」と呼びかけています。

 環境省廃棄物対策課によると、99年度に全国の保健所などに寄せられたアタマジラミの報告や相談は、4413件で9982人。報告義務がないため、年度ごとの比較はしにくいですが、件数で80年代後半の10倍以上です。

 保育所や幼稚園、小学校でかかる子どもが8割を占めています。  実数ではもっと多いでしょう。

 駆除薬はピレスロイド系のフェノトリン粉剤とシャンプーが市販されていますが、販売元の住友製薬ヘルスケア(大阪市)によると、粉剤「スミスリンパウダー」は年間13万2000人分、シャンプー「スミスリンLシャンプータイプ」は30万人分も売れているとのことです。 同社の薬相談窓口への問い合わせのうち、8割がシラミ関係だそうです。

 「なぜうつったのか」

 「どうしたらいいのか」と涙ながらに訴える母親もおられます。「はじめての経験で、パニック状態の方も多い」と担当者。

 アタマジラミは、体長2〜4ミリで灰色か灰褐色。1週間ぐらいで頭髪に産み付けられた卵からかえります。血を吸うため、頭がかゆくなり、ひどいと炎症を起こすこともありますが、伝染病を媒介することはありません。

 主に頭髪と頭髪の直接の接触で感染します。子どもに多いのは、頭を触れながら遊んだり、昼寝したりするため。1年を通して感染報告があり、6月にピークがあります。プールが始まる季節で健康診断や頭髪検査など発見の機会が増えることや、5月の連休で外国から持ち込まれやすくなることが理由との見方もあります。

 アタマジラミは終戦直後流行しましたが、DDTの散布や衛生環境の向上で一時激減した。その後、有機塩素系薬剤の禁止などで80年代初めに再びピークになったが、このときはピレスロイド系薬剤の使用で激減した。今回は2回目の「復活」といえます。

 国立感染症研究所(東京都新宿区)の安居院(あぐい)宣昭・昆虫医科学部長はその理由として、

(1)海外旅行が増えて外国から持ち込まれる

(2)シラミを知らない親が多くなり、拡大するまで気づかず、駆除も不十分になりがち

(3)ピレスロイド系の薬剤への抵抗性が強くなっている可能性がある、

などが考えられるそうです。

 「いずれにしても、不潔にしているからではない。先進国に共通しており、都市特有の衛生問題としてとらえる必要がある」と安居院部長は話しておられます。米国や英国では、アタマジラミ対策の全国組織が作られ、専門の相談窓口が設けられているそうです。

「何より怖いのは、だらしないからという先入観のため、親や先生が子どもをしかったり、子ども同士のいじめの原因になったりすること。正しい知識を持って、クラスなど集団で素早く対応して欲しい」と指摘しています。

<アタマジラミ対策>
発見は?

●成虫・幼虫は動きが速く見つけることはむずかしいです。

 卵は光沢のある灰白色のだ円形で、髪の根元近くに斜めに付着するため見つけるのは容易です。

 クリックすると大きな画像になります。

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●耳際や襟足で見つかることが多いです。

駆除は?  

●薬剤シャンプーは使用法を守る。3日に1度(3日おき)のペースで、3〜4回繰り返します。

 

●目の細かい専用のくしで、卵や成虫をすきとる方法もあります。  

●感染がわかったら、まくらカバーやシーツは共用せず、毎日取りかえる。熱湯やアイロンで除去できます。

心構えは?

●プールでうつることはまずない。ただ、ロッカーやタオルの共用は避けてください。  

●相談は保健所や役所の担当課へ。学校や保育園などで、一斉に対処しましょう。  

●不潔さとは無関係。子どもの心を傷つけない配慮を。

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