小児の副鼻腔炎

どんな病気?

小児の急性副鼻腔炎の多くは、かぜに続発して起こります。

 慢性化防止のためには初期治療が重要でかぜに引き続く鼻漏、特に膿性鼻漏が1週間以上持続する場合には、急性副鼻腔炎と考えられます。また鼻漏が3か月以上持続する場合を慢性副鼻腔炎といいます。

慢性副鼻腔炎は年々減少していますが、一方でT型アレルギーによって惹起するアレルギー性副鼻腔炎が増加しており、病態の変化が出てきています。

 小児慢性副鼻腔炎は本来、急性副鼻腔炎から移行する感染症でしたが、最近は、感染症に免疫、アレルギーという生体反応が関与してきているわけです。

 高学年で自然治癒する例が多いですが一部は成人まで移行し、手術の対象となる例もあります。

 小児期では原則として保存的治療法を行い、副鼻腔の換気排膿、抗菌、抗アレルギー剤の投与を主とします。  

 慢性副鼻腔炎児には高率に滲出性中耳炎を合併するので注意が必要です。

1、症状と診断  

副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎との主な症状の違い

●副鼻腔炎は、粘性および(あるいは)膿性鼻漏が主な症状で、鼻閉塞を多くは伴います。鼻閉塞はアデノイド、肥厚性鼻炎、鼻中隔彎曲症、鼻アレルギーでも起こりえます。高度になれば口呼吸を余儀なくされます。

●鼻アレルギーは、くしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉塞を主症状とします。

●鼻汁細胞診を行うと鑑別できます。
(Hansel染色、エオシノステイントリイ)、副鼻腔炎では好中球増多、鼻アレルギーでは好酸球増多、両者が合併すれば好中球増多となります。

慢性副鼻腔炎の存在診断には

●小児の場合CT検査が必須です。

左CT(慢性副鼻腔炎の治療前):赤矢印に膿が沢山貯留しています。

右CT(治療後):完全に排膿されてきれいになっています。(^_^)

2、治療は?

 急性・慢性を問わず治療の原則は、抗生物質、排膿、換気、消炎です。幼小児では副鼻腔が発育途上にあるので保存的療法を行います。

1、抗生物質

 小児副鼻腔炎での検出菌は急性、慢性を問わずインフルエンザ菌、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌が75%を占めます。

 抗生物質を最低7〜10日間の投与で効果を観察し、変化がみられない場合には感受性検査を行い投与薬を再検討することが必要です。

 純粘性鼻漏に対しては抗生物質投与の適応はありません。

2、排膿と換気

 こう鼻の励行。中耳炎を誘発するので鼻すすりの禁止。  

 点鼻薬:急性期に限って生理食塩液鵑で約1/2に希釈して投与すれば鼻閉塞に有用です。ただし2歳以下の乳幼児には使用しません。  

 向粘液剤:消炎酵素薬は粘液の性状を変化させ粘液線毛輸送による排泄を容易にします。塩化リゾチーム、セラペプターゼ、プロナーゼ、ムコダイン、ムコソルバンがあります。投与期間は4〜6週間です。  

 マクロライド少量長期投与療法:

 近年マクロライドの抗菌作用以外の気道慢性炎症に対する効果が注目され、エリスロマイシン少量(幼児 200mg、学童 300mg)長期投与の有効な症例が報告されています。

 症例により上顎洞穿刺洗浄療法や Proetz置換療法などが適応されます。

3。その他  手術療法:アデノイド手術や鼻茸切除手術の必要な症例があります。  

 アレルギー性鼻炎:アレルギー性鼻炎の合併する症例は稀ではない。このような症例ではアレルギー性鼻炎に対する治療を併用することが必要です。アレルギー性鼻炎の合併は副鼻腔炎の慢性化・遷延化の一因となります。

(参考)
 アレルギー性鼻炎  鼻アレルギーの患者は児童・生徒にも著明に増加しており、学校健診の場でも約10%以上に本症が疑われます。発作性再発性のくしゃみ、水性鼻漏、鼻閉を三主徴とし、鼻粘膜のT型アレルギーで惹起されます。本症は発症によって季節性と通年性とがあり、前者はスギを代表とする花粉症で後者は室内塵に生息するダニ、カビが代表的なものですが、多くは重複抗原に感作されていることが多いです。鼻アレルギーを発症しやすい素因は遺伝形成によって親から子に伝わると考えられ、この素因に住環境変化との因子がかかわって発症します。予防としては環境の因子の除去と抗原からの離脱が基本であるが、なかなか困難です。

 治療法として減感作療法、抗アレルギー薬を主とする薬物療法、手術的治療法などですが、日常生活では部屋の換気、掃除、寝具の乾燥、適度の運動が予防法として大切です。

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