肥満症

どんな病気?

 日本肥満学会では

肥満:

「身長(m)×身長(m)×22(kg)」を標準体重とし、肥満度+20%以上。

肥満症:

この肥満のうち、肥満による合併症がすでにある場合や、現在はなくとも、将来、発症する可能性の高い場合。

 一般に肥満の合併症には、糖尿病、高脂血症、高血圧、脂肪肝、高尿酸血症、膝関節症があります。

 特殊なものですが、肥満のタイプ分類で、内臓脂肪型肥満にあたる人では「死の四重奏」といわれ、すなわち
(1)上体肥満(特に内臓脂肪型肥満)
(2)高血圧
(3)糖尿病
(4)高脂血症(高中性脂肪血症)
の4つの条件が揃うことが多く、心筋梗塞などの心臓病で亡くなる危険が明らかに高まるといわれています。こういうタイプの肥満の方は特に注意が必要です。

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治療は?

◆治療方針

 肥満症治療の原則は、摂取エネルギーよりも消費エネルギーを上回らせて減量を行い、合併症の改善もしくは予防を図ることにあります。

 しかし誤った減量法は、栄養障害や不整脈等の危険を伴うことがあり正確な栄養学的知識に基づいた指導、管理が必要です。

 また長期にわたる体重のコントロールには、食生活を中心としたライフスタイルそのものの問題点を明らかにし改善しなければなりません。

1、食事療法  まず、肥満者によくみられる、まとめ食い・早食い・ながら食い・間食(特にジュース類)・夜食などをやめ、1日3食を定時に摂取するよう正しい食習慣を身につけさせることが基本です。

a。低カロリー食療法(low calorie diet;LCD)

 低カロリー食としては、1日に1,000‐1,500kcalが適当であり、蛋白質は少なくとも標準体重1kg当たり1g/日、炭水化物はケトーシスを防ぐために80‐100g以上を摂取させ、ビタミン・ミネラルや水分を十分に摂取して下さい。

 長期間低カロリー食を継続させるためには、カロリーが少なく満腹感が得られるこんにゃく・海藻類・きのこ類・野菜などを多くしたり、市販の低カロリー食などを利用するのもよいでしょう。また砂糖は内臓脂肪を増加させるので控えるべきです。

b。超低カロリー食療法(very low calorie diet;VLCD)

 低カロリー食療法で十分に効果の得られない方や、減量を短期間で行う必要のある場合には、入院をして超低カロリー食療法(VLCD)を行う場合があります。VLCD療法は、一般に1日600kcal以下の食事療法であり、規格食品としてはオプチファスト70(太陽化学)があります。

 これは1日5包(420kcal)を使用した場合、1日当たりで蛋白質70g、糖質30g、脂肪2g,および必要量のビタミン、ミネラル、電解質が摂取できます。使用法としては、1包を180mlの水あるいは微温湯に溶解し、1日に5包飲用し、その上に1日2リットル以上の水分摂取します。

 施行時は尿中ケトン体や窒素バランスのチェックなど注意深い観察が必要です。また微量金属の不足になるため6週間以上は継続しないほうがよいといわれています。

2、運動療法

 運動療法は、減量に関しては食事療法ほどの効果は望めませんが、内臓脂肪が減少し、インスリン抵抗性、脂質代謝異常、高血圧などが改善されます。

 水泳・サイクリング・ジョギング等の有酸素運動を少なくとも10〜20分以上継続し、運動強度は心拍数をめやすにすると、
20〜30歳代で130/分、40〜50代で120/分、60〜70代で110/分程度が望まれます。しかし毎日続けることはなかなか難しいので、例えば万歩計をつけて1日1万歩以上歩くというような生活習慣を工夫するとよいでしょう。

3、行動療法と集団療法

 肥満症治療を長期継続させるには、ライフスタイルを変えなければなりません。そのために、具体的な行動をきちんと決める必要があります。基本的には、毎日の詳細な食行動、体重の変化、運動量、などを記録し、それを分析、評価し、自己管理を行うとともに減量にたいする動機づけを強化します。集団療法(肥満教室など)は一人では落後しがちである減量をお互いに監視し、また励ましあって継続させることができて効果的です。

4、薬物療法

 マジンドール(サノレックス、サンド製薬)だけが、現在我が国で高度肥満に対して適用が認められています。マジンドールは視床下部に直接作用し食欲抑制効果を現します。使用法としては0.5mg錠を昼食前に1錠投与することから始め、その後副作用等の出現に注意しながら1日2〜3錠まで徐々に増量します。主な副作用としては抗コリン作用に基づくと思われる口渇、便秘、胃部不快感および睡眠障害等があります。また、耐性が生じるため3か月以内の使用とされています。

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